「金属交換なら無税」という危険な勘違い
以前、撤去冠収入は税務調査で必ずチェックされる項目だとこちらのコラムで書きました。
処分した際の金属代は現金でもらっても必ず足がつくため、漏れなく収入計上してください。
今回はある先生から言われた発言をきっかけに、改めて撤去冠について書きます。
その先生には、こんなことを言われました。
A先生「お金でもらうのではなく、パラジウムなどの金属でもらえば何もしなくていいですよね。税金もかからないと聞きました」
私「何もしないのはダメです。金属と交換した金額も適切に会計処理しないと、売却の税金がかかりますよ」
A先生「どうしてですか。金属でもらえばそのまま歯科材料に使えますし、税金はかからないと聞いたのですが…」
税務上は「現金での売買」と同じ扱いになる
A先生が述べた案について、この場合の税務上の扱いは次のようになります。
税務上は「①歯科医院が撤去冠を金属回収会社に売却して現金をもらい、②その現金で新たにパラジウムを購入した」と考えます。
昨今は金やパラジウムの相場が高騰しており、撤去冠の取引額も年間で数十万円から百万円単位になることが珍しくありません。
そのため、まずは売却額を「雑収入」として計上しなければならないのです。
受け取ったパラジウムを歯科材料に使用し、「材料仕入」として処理すれば経費計上できます。
ただし、税務調査のときに「受け取ったパラジウムを当期中に使った」と経費として認められるかは非常に微妙です。交換した金属を実際に使用したという明確な証拠が必要になります。
証拠が不十分だと「貯蔵品(在庫)」として資産計上を主張される可能性があり、経費に落ちるのは翌期以降になってしまいます。
「収入」は徹底的に調べられ、「経費」は証拠を求められる
最初から売却時に雑収入として計上し、交換した金属を材料仕入として処理しておけば、経費処理としても何の問題もありません。
しかし、金属売却時に雑収入の処理をしていないと、材料仕入としての経費処理もできなくなります。
そうなると、金属回収会社の記録(売却の証拠)から収入計上の漏れを指摘されますが、医院側にパラジウムを使用した証拠がないと、貯蔵品として在庫計上を主張されやすくなります。
税務署は「収入の証拠」は徹底的に探しますが、「経費の証拠」までは探してくれません。受け取った金属を本当に使用したかは、医院側で証明する必要があるのです。
技工指示書などで特定できれば別ですが、難しければいったん雑収入分の税金を支払って、翌期以降に材料仕入として経費処理することになります。
証拠を残して「両建て」で処理するのが鉄則
金属回収会社に売却・交換したときは、売却書類や交換の明細書を確実に保管しておいてください。会計事務所にその書類を提出して報告すれば、雑収入と材料仕入を「両建て」で正しく処理してくれます。
昨今の金属相場の高騰もあり、撤去冠収入は税務調査で確実に調べられます。正しい知識で、しっかりと処理しておきましょう。






