最近の歯科医院の開業では、新築テナントを中心に、普通借家契約ではなく定期借家契約を採用するケースが増えています。
定期借家契約は貸主側にとってメリットの多い契約形態ですが、借主である歯科医院側から見ると注意すべきポイントも少なくありません。
そこで今回は、定期借家契約を締結する際に押さえておきたいポイントについて解説します。
「中途解約ができない」という大きなリスク
定期借家契約の最大の特徴は、契約期間中の中途解約が原則として認められていないことです。
例えば20年間の定期借家契約を締結した場合、院長先生の病気や体調不良、後継者不在などにより閉院せざるを得なくなったとしても、契約上は残り期間の賃料負担が問題になる可能性があります。
歯科医院の経営は長期にわたるため、将来何が起こるかを予測することはできません。
そのため、契約時には「一定期間が経過した後は、事前通知によって解約できる」という中途解約特約を盛り込んでおくことが重要です。
「短期契約なら安心」とは限らない
では、予期せぬ事態のリスクを避けるために10年程度の短い定期借家契約にしておけば安心なのでしょうか。
実は、こちらにも別の重大なリスクが存在します。
定期借家契約は期間満了によって終了する契約です。そのため、契約終了後に再契約してもらえる保証はありません。
貸主の判断によっては再契約を断られる可能性もあります。
さらに、再契約が認められたとしても、新たな契約条件は貸主側が提示することになります。
例えば、最初の10年間は月額30万円で契約していたとしても、再契約時に月額60万円を提示される可能性があります。
その条件を受け入れられなければ、スケルトン状態に戻して退去するという選択肢しか残されないケースもあります。
高額な設備投資を守るためにも長期視点が必要
歯科医院は一般的な店舗と異なり、内装や設備への投資額が非常に大きい業種です。
ユニットや配管設備、内装工事などに多額の費用をかけて開業したにもかかわらず、10年程度で移転を迫られれば経営への影響は決して小さくありません。
そのため、契約期間の短さは必ずしも安全とは言えず、長期的な医院経営という視点で契約内容を検討する必要があります。
おすすめは「20年契約+中途解約特約」
私がお勧めしているのは、「20年間の定期借家契約を締結し、5年経過後は10か月前通知により解約できる特約を設ける方法」です。
この形であれば、長期間にわたって安定した診療環境を確保しながら、病気や経営環境の変化といった不測の事態にも対応できます。
定期借家契約は契約書にサインしてしまうと簡単には変更できません。開業時には内装や医療機器に目が向きがちですが、実はテナント契約こそ将来の医院経営を左右する重要なポイントです。
単に契約期間だけを見るのではなく、「長く借り続けられること」と「必要なときに退出できること」の両方を実現できる契約内容になっているかを、必ず確認するようにしましょう。






