ドクター増員に適した時期は?
このコラムでは経営や資金関連のお話をすることが多いのですが、久しぶりに「採用」について考えてみたいと思います。
コンパクトな運営で「しばらくドクターは自分ひとりでやっていく」という先生もおられるかと思いますが「ドクターの採用」は誰しも可能性がある課題。今回は、勤務医の先生を採用する「ベストなタイミング」や「影響」を見ていきましょう。
① 自分の限界まで診療した後
患者さんが増えてくるとすぐに勤務医の採用を検討する医院もありますが、私は勤務医の採用は慎重に考えたほうが良いと考えています。「自分の限界まで診療しているか」改めて考えてみてください。現状のままで、工夫をすればもう少し売上を上げられそうであれば、ぜひもうしばらく一人でやってみてください。
例えば、なるべくひとり(現状)で600万円以上を売上げ、「予約が取りにくい状態」になるのを待ってから勤務医の採用を考えても良いかと思います。
② カルテ件数500件達成後
カルテ件数でいうと500件がひとつの目安になります。これくらいの患者さんを一人で診て限界を感じたら、勤務医ドクターの採用を考えましょう。売上にすると保険診療だけで月600万円以上、自費を入れると700万円くらいです。
上の①の最後で触れましたが、予約が取りにくいと1か月の来院回数(月回数)の平均が下がる傾向にあります。月平均1.5回を下回ると予約が取りにくい状態だと言えます。カルテ件数500件、月回数1.5回以下が勤務医を採用するひとつの目安になります。
③ 利益率を考慮し初年を過ぎてから
勤務医を採用すると利益が落ちることが多いです!そもそも1年目は診療に慣れないこともあり、思ったほど売上は見込めないことが通例。開業1年目の利益はマイナス、増えるのは2年目以降になる傾向が。
そこに新しいドクターを入れるとなると、教える時間も取られるうえ、当然ながら給料を支払えば利益は目減りします。このことからも、ドクターの新規増員は2年目からが得策です。そして採用することになった場合も「院長が利益をあげて、その利益の一部を勤務医にあてる」くらいの気持ちで臨んだ方がいいですね!
④ 勤務医の基準となるのは院長の売上
勤務医のドクターが基準にする売上は「院長の売上」です。「院長の売上が400万円だとすれば、自分は200万円の売上があれば充分だ」といった具合です。
院長より勤務医の売上が上回ることはありません。したがって院長一人で600万円~700万円の売上をあげる必要が出てくるのです。
以前あったケースですが、院長の売上が400万円ほどの時に勤務医を採用した医院がありました。この医院の利益が1000万円ほどの時でした。勤務医を採用したことで売上は500万円に増えましたが、医院の利益は元の1000万から500万円に下がってしまったのです!そんな状況が長く続いたとのことで、いろいろ大変だっただろうと想像できます。これはちょっと極端な例かもしれませんが、採用には大なり小なりこういったリスクもあると覚えておいてください。
⑤ 勤務医の存在が励みに
勤務医を採用して長年になる院長の話を聞きました。(院長自身が)50歳を過ぎると、日々の研鑽をはじめ色んなことが面倒になることも。そんな時、近くに別のドクター(勤務医)がいると良い影響があるようです。
こちらからレクチャーするためには、まず自分が勉強しなければならないため、学びの動機づけに。さらに、自分が知らない知識を勤務医から教えてもらうこともあったりして励みになることも多いようです。
あと、若手の勤務医がいると「活気があるイメージで印象がいい」という患者さんも多いようですね。こういった患者さんの評価は院長自身のやりがいにもなります。
勤務医と共に成長できる医院へ
前段で「利益とのバランスを考えて」といったアドバイスをした通り、実際大変なことも多いドクター増員ですが、フレッシュな勤務医と一緒に院長も成長する!そんな医院を目指すのも素敵だと思います。
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