森川会計事務所のすぐ近くにある喫茶店。
その中の一角で、石田と工藤と新開が3人で話をしている。
新開に話しかける石田。
「新開先生は森川先生ともお知り合いなんですか?」
飲みかけのティーカップを一旦テーブルに置き、石田を見る新開。
「ええ。知り合いも何も、うちの新開歯科医院はM社さんにお願いして開業したのよ。森川先生とは顧問契約を結んで頂いてるの。」
軽く微笑む新開。
「え!?先生の開業もM社さんだったんですか。知らなかった・・・」
驚く石田。
攻めるように、工藤の顔を見る。
石田の視線に困惑する工藤。
それに構わず、話を続ける新開。
「私も石田先生が開業すると聞いていたけど、M社さんと進めているとは知らなかったなぁ。」
「え?どうして私が開業するということをご存知なんですか?」
驚いて新開の顔を見る石田。
新開、軽く笑いながら
「叶さなえよ。彼女と付き合ってるでしょ?。さなえが心配していたわよ。心配性なのは大人になっても相変わらずね。」
意外な答えに戸惑う石田。
「さなえが・・・ですか?」
新開、頷きながら
「さなえに連絡しておくわね。森川先生とM社さんが付いているから、安心しなさいって。」
優しく微笑む。
「あ、ありがとうございます。」
戸惑いながらも、新開に向かって頭を下げる石田。
そのまま工藤に視線を投げかける。
「それにしても工藤さんも人が悪いなぁ。新開先生を知ってるんだったら、言ってくれればいいのに。」
少しすねたような言い方に、工藤は頭をかきながら苦笑する。
「いえ、私も石田先生と新開先生がお知り合いだったとは、まったく知らなかったので・・・失礼いたしました。」
石田に向かって、軽く頭を下げる。
それで気が済んだのか、石田は新開に顔を向ける。
「ところで、新開先生は開業するのに苦労されなかったんですか?」
新開、ゆっくりとティーカップを口に運びながら
「そうね。苦労したんじゃないかしら?」
さらりと答える。
「でも今考えても、_M社の誰かさんが随分サポートしてくれたから。でね、実は新開歯科医院の分院を開業しようと思って、森川先生のところに相談に来たの。それくらい信頼しているのよ、M社の誰かさんを。(工藤に)ね!」
照れたように微笑む工藤。
その工藤を見ながら、石田が話を繋ぐ。
「そうですね。こうやって融資がどうこうって言う話は、工藤さんや森川先生がいなかったら絶対できないことですよね。」
微笑みながら頷く新開。
「精一杯やらせて頂きます。」
石田に向かって、笑顔で答える工藤。
3人和やかな空気の中で、話を続ける。
東京北銀行のビル。
1階から、石田と工藤の2人が出てくる。
2人とも表情は晴れやかである。
「石田先生、よかったですね。無事、融資の交渉も纏まって。」
笑顔で石田に話しかける工藤。
「はい、本当に助かりました。これも工藤さんと森川先生のおかげです。」
「いえいえ、私は何も・・・森川先生のアドバイスは的確でした。」
「これで、物件に続いて融資も決まったし・・・。あとは開業へ向かって一直線ですね。」
工藤の顔を見る。
「でも先生、開業までにやらなければならないことは、まだまだたくさんありますよ。」
真顔で答える工藤。
「また工藤さん、脅かさないで下さいよ。」
苦笑する石田。
「先生、次は器械の選定です。先生の診療方針に合った医療機器を決める必要があります。」
石田、真面目な顔になり、腕組みをする。
「うーん、そうですね。特にチェアーはずっと使用するものですから、慎重に選ばないと・・・。最近はレセプトのオンライン化もあるので、デジタル機器も揃えておかないといけないし・・・やっぱりCTやレーザーもほしいしなぁ・・・。」
あれこれと思案顔の石田。
「先生、とりあえず弊社のショールームへいらっしゃいませんか?大抵のものなら、揃っていますから。実際に見て触って、判断していただければと思います。」
「はい、勿論私もそのつもりでした。是非よろしくお願いします!」
工藤に向かって頭を下げる石田。
「では、石田先生、いつにしましょうか?。早いほうが良いとは思いますが、石田先生のご都合もあるでしょうし・・・」
工藤、手帳を取り出し、スケジュールを確認する。
「私も早いほうが助かります。可能だったら、今からでも大丈夫ですよ。」
工藤、驚いて石田を見る。
「え?今からですか?」
「はい、工藤さんさえよければ。善は急げ、といいますからね。」
笑顔で答える石田。
「かしこまりました。では、お忙しいところ誠に恐縮ですが、弊社のショールームまでご案内させていただきます。」
にっこりと微笑む工藤。
2人、足早に歩き出す。