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歯科開業ブログ「医療法人のデメリット」

「医療法人のデメリット」

2024/04経営安定化の秘訣
ポイント
  • ・法人化も利点ばかり!とはいかない
  • ・法人は<資金面(お金がらみ)の注意点>多数

法人開業の“弱点”を理解

「法人化」について考える2回目。前回は法人化した場合のメリットを取り上げましたが、一方の「デメリット」についてもしっかり検証しておきたいと思います。

① 事務手続きやそれにかかる費用が増える

医療法人をつくると法人と個人の区分を明確にする必要が出てきます。
そのため事務負担が今までよりも煩雑になります。帳簿作成の手間がかかる分、会計事務所への費用も増えます。さらに、都道府県に決算届を提出する必要があるため資産総額の変更登記も必要になり、司法書士などへの費用もかかります。

② 社会保険の加入が必須に

個人事業では常時従業員5人以上でなければ社会保険の加入義務はありませんが、法人は1人でも従業員がいれば加入義務が生じます。よって、歯科医院でも医療法人をつくれば社会保険の加入が必要になります。社会保険は会社と従業員が折半して負担します。法人の負担は給与の15%が目安。それなりの負担増になることを理解しておく必要がありそうです。

③ 引き継げない個人事業の借入金が発生

個人開業したときの借入金は全額引き継げる訳ではありません!
医療法人の認可時、引き継げる金額が決まります。リース物件など資産と紐付けられている場合は引き継げますが、設備投資と運転資金が一緒の場合、引き継ぎ額は限定的です。
実際に借り換えられる金額は金融機関が決定します。「個人事業の借入金を一括返済して、法人を新たに審査される」ことも!法人に引き継げる借入金は少なくなると覚えておきましょう。

④ 役員貸付金が発生

法人と個人は区分されます。役員報酬についても、給与総額の全額が支給されるのではなく所得税・住民税・社会保険料などを差し引いた金額が(役員報酬の)支給額になります。

また、上③で触れたように個人事業の借入金で法人として引き継げない部分は役員報酬から返済します。そうなると実際に使える役員報酬はかなり少なくなります。それを理解せずに法人から支給額以上の預金を引きだすと役員貸付金が発生します。
役員貸付金について、金融機関から融資を受けるとき、発生の理由を聞かれる場合があります。場合によっては融資の条件が悪くなることも。税務調査のときは貸付金について利息を計上するよう指導されます。

⑤ 法人の「含み益」には最終的に税金がかかる

医療法人を子供に承継させると、基金拠出金だけが相続財産になります。ですが、子供が事業を引き継がない場合は医院を清算することになり、現預金などの資産総額が基金拠出金を超えていれば理事長に退職金を支払います。この退職所得にも所得税はかかります!
通常の所得税に比べれば税率は低いのですが、退職金で残余財産を整理するときに退職所得がかかります。「医療法人は清算時にも税金がかかる」ことも知っておいて下さい。

開業ビジョンに照らして検討を

このように、どんな局面においてもメリットしかない!といった都合の良いことにはなかなかなりません。先生によって何を優先するかでも変わってきますので、法人化のメリットとデメリット双方をよく理解の上、検討しましょう。

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