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開業は戦いだ!開業は戦いだ!

税理士森川敏行先生の歯科開業コラム

「借入限度額の目安」

2019/12経営安定化の秘訣
ポイント

事業資金調達など大きな出費が見込まれる際、利用する方も多い金融機関の各種借入サービス。
イザという時、資金面で強い味方になってくれる一方、月々の返済が気になり、逆に不安材料になってしまう懸念も…。
でも、そうなっては本末転倒!まず、ご自身の診療収入をしっかり把握することが無理のない返済に繋がる第一歩のようです。

今回は、開業準備中最も気になるテーマのひとつである「借入限度額」がテーマです。ぜひご一読を!

こんなに借金をしても返せるだろうか

金融機関から借り入れをしたものの「こんなに借金をしても返せるだろうか」と不安になると思います。
金融機関から借り入れができる金額と、実際に返済できる額は違いがあります。返済能力より大きい借り入れをしてしまうと、あとが大変です。自分にとって適正な借入金の額を知っておきましょう。

1.まず、売上の確認

まず自分が1月にいくらの売上を上げられるか確認しましょう。
レセプトコンピューターでわかるので、勤務先で毎月の保険点数を調べます。保険と自費を合わせておよその診療収入を把握しましょう。
実際の診療収入でなくても、開業したらこれくらいの収入を上げられるという金額で設定しても構いません。(ただし現実に上げられる額)
ここでは1ヶ月の診療収入を360万円とします。(保険収入30万点+自費収入60万円)

2.1ヶ月の利益を計算

つぎに1ヶ月の利益を計します。医院によって利益率は違いますが、目安は診療収入の30%~40%。
今回は利益率を40%で計算します。
360万円×40%=144万円・・・1ヶ月の利益。

3.毎月の返済額

毎月の返済額は利益の25%を目安にします。幅はありますが、利益から税金を引いて生活費と貯金も考えると、利益の25%あたりが健全な返済額です。返済額の割合が高いと生活費も少なくなり、借金の返済のために診療している気持ちになります。また貯金もできません。
144万円×25%=36万円・・・1ヶ月返済額の目安

4.借入額の目安

1ヶ月の返済額がわかれば借入金の総額を計算します。事業用の借入金は15年の期間が目安です。
15年×12ヶ月=180ヶ月。
借り入れには利息がかかり、返済総額の15%ほどになります。
つまり180ヶ月×(100%-15%)=153ヶ月が元金返済の期間です。

わかりやすく150ヶ月にすると借入金の目安は、
36万円×150ヶ月=5,400万円……借入金の目安

全部計算すると。
360万円×40%×25%×150ヶ月=5,400万円

算式を整理します。
360万円×15=5,400万円
つまり1ヶ月の診療収入の15倍が借入金の目安です。

人によって差はありますが、まずはこの金額を目安にします。

戸建て開業なら更に……

この計算はテナント開業を前提にしていますが、戸建て開業だと5000万円では足りません。
その時は、自宅兼医院で検討します。住宅ローンも年収の25%を支払える額と考えると、医院の借入金5,000万円に自宅5,000万円を合わせて、およそ1億円の借入金が目安になります。
いったん借り入れをすると返済義務が生じます。完済まで途中で休むことはできません。無理のない返済のために自分の診療収入を把握して、返済能力に合わせた計画をすることが大切です。

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