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歯科開業NET小説 チャプター09 「設備の選定」

チャプター09 「設備の選定」

無事、銀行から融資の受託をもらえた石田は、工藤と一緒にM社のショールームにやってきました。石田の診療方針にそった医療機器を探すためです。


オフィス街の一角。ビジネスビルが立ち並ぶ。

「M社」のロゴマークが書かれている看板の建物が見える。

その1階がショールームとなっていて、工藤の先導で石田が中に入る。

「いらっしゃいませ!」

広々としたショールームに受付女性の声が響く。

「石田先生、こちらへどうぞ。」
窓側の席に案内する工藤。

「はい。」

言われるがまま椅子に座り、改めてショールーム内を見回す。

右側にはチェアーが何台も展示され、左側にはデジタル機器やレーザー、そしてレントゲン器機などがずらりと並んでいる。

その種類の多さに圧倒される石田。

「いらっしゃいませ。」

受付の女性が、笑顔でコーヒーを運んでくる。

工藤、石田の向かい側の椅子に座り、

「石田先生、本日は弊社のショールームにご来場いただき、誠にありがとうございます。改めて御礼申し上げます。」

ゆっくりと一礼する。

「いえいえ、こちらこそ無理を言ってすみません。」

工藤の仰々しい態度に苦笑する石田。

「先生、とりあえず一息入れていただいて・・・その後に弊社の製品をご説明させていただきたいと思います。」

「よろしくお願いします。」

お互いに軽く礼をして、微笑む。


「石田先生、こちらです。」

工藤が、ショールームの展示スペースへ石田を案内する。

ズラリと並んでいるチェアーを順番に説明していく工藤。

「こちらがスペースラインで一番人気の[イムシア]です。」

[イムシア]を覗き込む石田。興味津々である。

「ちょっと倒してみますね。」

スイッチを操作する工藤、チェアーがゆっくりと動き出す。

「石田先生、おかけ下さい。」

「あ、はい。」

石田、術者側の椅子に座る。

「人間工学と最先端の技術による診療環境を提供します。優しいユーザーインターフェイスと自然な動きでピックアップできるインスツルメント。」

インスツルメントが石田の手元にくる。

「なるほど、確かにこれなら取り出しやすいですね。」

何度かピックアップしてみる。

「治療によるストレスを軽減し、より診療に集中できる『人』を中心とした効率的な診療環境を目指します。」

工藤の流れるような説明は続き、その都度、大きく頷く石田。

ショールームに展示しているチェアーの種類は豊富で、[イムシア]の他にも[トレファート][セプタス][G40]などが、工藤によって次々と説明される。

石田、ふと一番奥に展示されているチェアーに目をとめる。

「このチェアーは変わっていますね。ベッドタイプですか。」

チェアーに近づく石田。

「はい、これは[フィール21]と言いまして、『pd』を実践するのに最適なチェアーです。」

「え?、『pd』・・・ですか?」

怪訝な顔の石田。

「はい、『pd』は『Proprioceptive Derivation』の略で、日本語に訳すと『固有感覚に基づく演繹(決定・選択)』という意味です。」

「うーん、何か難しそうですね。」

腕組みをして考え込む石田。

「でも石田先生、『pd』を実践すれば、術者やアシスタント、そして患者さんの身体に優しく、しかも正確な治療が可能となります。」

笑顔で説明する工藤。

石田、腕組みをしたまま

「難しそうだけど、ちょっと興味はありますね。フラットなチェアーというのもインパクトあるし・・・。」

「石田先生、もしご興味がおありなら弊社のセミナーに参加されてはいかがですか?。丁度、来週の土曜日にセミナーが開催される予定です。」

「そうですか・・・わかりました。一度検討してみます。」


一通りチェアーの説明が終わった後も、レーザー、レントゲンと説明は続き、最後にパソコンが複数台設置されているコーナーに石田と工藤はやってきた。

「弊社の院内ネットワークシステム[DOOR]は、診療の流れに沿ってトータルにサポートしています。その核となるのが・・・」

工藤、パソコンの画面を次々と変えながら説明していく。

「レセプトカルテコンピューター[DOC-5]、総合画像処理ソフト[i-VIEW]、患者プレゼンテーションソフト[トリニティコア]です。」

「シームレスな接続環境なので、忙しい診療の中でもストレスなく活用いただけます。」

大きく頷きながら、画面を食い入るように見つめる石田。

「どれも素晴らしいですね。うちの院長にも見せたいくらいだ・・・。」

感心しきりの石田であった。


ショールームの中を1人で歩き回る石田。

「こうして見ていると、どれも素敵に見えてきて欲しいものがいっぱいできてきた。チェアーにCTにレーザー、そしてデジタル機器・・・」

指を折って数えていく石田。

それを遠くから見ている工藤が、小声で呟く。

「石田先生、どれもこれも欲しいのはよくわかりますが・・・予算を忘れては困ります。」


次回へ続く~

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